2017年11月19日日曜日

解説マガジン発行!

大詰めの重要局面にさしかかった植村裁判のすべてを、わかりやすくまとめたマガジンタイプの「徹底解説本」ができました。11月22日に発行します。
東京、札幌両訴訟の争点を整理し、原告弁護団の法廷での迫真の弁論をつぶさにたどり、被告たちの主張の根拠が完全に崩れ落ちたことを明らかにする渾身のドキュメント集です。解説、記録、情報、資料をたっぷり収録しました。
【主な内容】Q&A植村裁判の争点、植村隆・意見陳述全文、東京・札幌訴訟の口頭弁論全傍聴記、弁護士と新聞記者による論考集「被告たちの主張は最初から破綻していた」、慰安婦報道をめぐる裁判、全国に広がる支援の輪と応援の声、訴状全文、ブックガイドほか。B5判、本文横組み60ページ、表紙カラー4ページ。頒価300円。

◆購入申し込みは下記あてにお願いします。①お名前②住所③電話番号④冊数、を明記してください。代金と送料(1冊180円)は、こちらから本に同封する振込用紙でお支払いください(後払いです)。
uemurasasaeru@gmail.com または、FAX011-351-6292

表紙2、4ページ


目次ページ

2017年10月13日金曜日

東京第10回口頭弁論

なおも「論評」と言い逃れる被告側の逃げ道をふさいだ

東京訴訟で今年最後となる第10回口頭弁論が1011日、東京地裁で開かれた。傍聴券の抽選はなかったが、専修大・藤森ゼミの学生など初めて傍聴に参加する人も多く、同地裁で最も大きい103号法廷は満席となった。遅れてきた数人は入場できずに「立ち見はだめですか」と残念がる一幕もあった。次回から抽選が復活する見通しだ。壇上の裁判官たちは、傍聴席を埋め尽くした老若男女が真剣に耳を傾けている姿を目の当たりにして、植村さん支援の熱意が続いていることを実感したはずだ。今後も傍聴をぜひお願いしたい。

■「論評」の前提となっている事実の記述は「論評」ではない
午後3時前に開廷。被告の西岡氏・文春側は主任の喜田村洋一弁護士が欠席し、若い弁護士ひとりだけ。原告側弁護団は植村さんを囲むように10人が顔をそろえた。原告が提出した準備書面や証拠説明書を確認したあと、原告弁護団事務局長の神原元弁護士が第9準備書面の要旨を朗読した。

裁判の焦点である「捏造」という表現が名誉棄損にあたるかどうか、をめぐって、被告側は「『捏造』というのは事実の摘示ではなく、意見ないし論評」であると主張している。言い逃れとしか思えないような主張だが、神原弁護士は切れ味のよい2段構えの反論を展開した。「捏造」という表現が「意見ないし論評」にあたるがどうかは別としても、その「論評」の前提になった事実摘示そのものが「不法行為にあたる」という主張だ。
たとえば、「(植村さんが)義理のお母さんの起こした裁判を有利にするために、紙面を使って意図的なウソを書いた」と西岡氏は書いている。「捏造」という言葉こそ使っていないが、「意図的にウソを書いた」という記述は「意見ないし論評」ではなく明らかに事実として書いている。新聞記者が利己的な動機で読者をだます記事を書いた、ということを「事実」として述べているわけだ。
神原弁護士は「これは証拠によって存否を決めることができる問題です」と指摘。被告側が「意見ないし論評」と言い逃れる抜け道をピシャリとふさいだ。

■社会的評価を低下させる記述自体が不法行為にあたる
ほかにも、「(金学順さんの)キーセンへの身売りを知らなかったなどあり得ない。分かっていながら都合が悪いので意図的に書かなかったとしか言いようがない。」などという西岡氏の記述を取り上げて、これは植村記者の社会的評価を低下させることを狙っており、「それ自体が不法行為にあたる」と断言した。

もう一つの論点は、西岡氏と文春側は何を、どこまで立証するつもりなのか、という点だ。
週刊文春の記事は、植村さんが就任先の大学で「慰安婦問題について取り組みたい」と述べたと書いているが、被告側はこの点を立証していく意思を示した。神原弁護士は「この点は、被告・週刊文春が植村さんに対するバッシングを故意にあおった部分であり、重要な意味を持ちます」と指摘。取材にあたった週刊文春のT記者の取材メモの提出を求めた。植村さんは当時そのような言動をしていないので、いったいどうやって「立証」するつもりか、被告側のお手並み拝見というところだ。

この「立証」の要求に対して、被告側弁護士は「持ちかえって検討します」と答えただけ。原裁判長は被告側に11月13日までに回答を提出するよう求めた。今度は被告側が、どんな「取材」をしたのか、しなかったのか、その手の内を明らかにする番だ。

次回(第11回口頭弁論)は来年1月31日午後3時半から。

裁判の後、午後4時から参議院議員会館で報告集会が開かれ、神原弁護士と植村氏が報告、楊井人文氏(弁護士、日本報道検証機構代表理事)が「フェイクニュースにどう向き合うか」と題して講演した。

写真上左から、神原弁護士、楊井弁護士、植村さん。
下=会場の参議院議員会館講堂






2017年10月11日水曜日

10月の裁判と集会


東京訴訟の第10回口頭弁論と集会は10月11日にありました。
札幌訴訟の集会は10月13日にありました。


2017年9月30日土曜日

高裁でも朝日が勝訴

慰安婦報道をめぐって朝日新聞が訴えられている民事訴訟(賠償請求)で、また原告敗訴、朝日勝訴の判決がありました(9月29日)。

【朝日新聞9月30日朝刊】
慰安婦訴訟 二審も本社勝訴
朝日新聞の慰安婦に関する報道で「国民の名誉が傷つけられた」として、国内外の56人が朝日新聞社に1人1万円の慰謝料を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(村田渉裁判長)は29日、原告の請求を棄却した昨年7月の一審・東京地裁判決を支持し、原告の控訴を棄却した。
 対象は、慰安婦にするため女性を無理やり連行したとする故吉田清治氏の証言記事など、1982~94年に掲載された計13本の朝日新聞記事。原告側は「日本国民の国際的評価を低下させ、国民的人格権や名誉権が傷つけられた」と主張し、2015年1月に提訴した。一審では2万5722人が原告に名を連ねた。
 判決で高裁は「旧日本軍の行為や政府の対応を指摘する内容で、原告を対象とした記事とはいえず、原告の名誉を侵害したとはいえない」と判断した。また、「国民一般が、知る権利を根拠として、報道機関に対し誤った報道の訂正を求める権利を有するとは解されない」とも述べた。
 朝日新聞社広報部は「弊社の主張が認められたと考えています」との談話を出した。

朝日新聞を訴えた訴訟はこの裁判を含めて3つあり、いずれも1審は原告が敗訴、2審も2つめの敗訴、計5連敗ということです。なお、この裁判の原告弁護団長、高池勝彦弁護士は、植村裁判の札幌訴訟では被告櫻井よしこ氏の代理人をつとめています。

2017年9月24日日曜日

『真実』必読の書評

ひとつの書評がいま共感の輪を広げています。関西で活動している「日本軍『慰安婦』問題・関西ネットワーク」のブログに掲載されている植村さんの著書『真実』の書評です。掲載日はことし3月4日ですからもう半年たっていますが、最近になって初めて目にした人たちの間で、評判になっています。「目線が温かくて、率直に共感を寄せられていて、力づけられた」「とても良い紹介ですね」「植村バッシングの本質を簡潔明快に突いている」「植村さんが勇気をもって再び慰安婦報道を『再開』したことの意味をしっかり伝えてくれている」「植村さんの生き方は確実に人々の共感を呼ぶのだと確信しました」……。
筆者のおかだだいさん、ありがとうございます。書評の全文を以下に掲載させていただきます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  
植村隆著『真実 私は「捏造記者」ではない』(岩波書店)を読みました。

植村さんは言わずと知れた、産経新聞や右派論壇に「捏造記者」と猛バッシングを受けた人。1991811日、金学順さんが名乗り出る3日前に彼女の証言テープを聴いて朝日新聞にその第一報を書いたために言われもない批判を受けることになりました。朝日新聞を退職し松蔭女子学院に就職が決まっていた植村さんに対するバッシングは苛烈を極め、娘までもが殺害予告を受け、松蔭の職を失うことになりました。現在は西岡力と週刊文春に対する名誉毀損裁判を東京地裁で、櫻井よしこと週刊新潮・WiLL・週刊ダイヤモンドに対する名誉毀損裁判を札幌地裁で闘っています。

日本軍「慰安婦」問題という側面でだけみれば、植村さんが特筆した仕事をしたとは思えません。日本軍「慰安婦」問題がここまで大きな問題になったのは金学順さん自身が名乗り出たからであり、「記事が」ではなく、金学順さんの存在そのものが社会にインパクトを与えたからです。それに植村さん自身が書いているように、植村さんの配偶者が太平洋戦争犠牲者遺族会の幹部の子だということもあって、「慰安婦」問題からは距離をおいていたのだといいますし。

植村さんの記事は「強制連行」とは書いていませんし、「挺身隊」という言葉は当時の韓国では「慰安婦」と同義でした。当時の記事に接した人も、「慰安婦」か「挺身隊」かということで「捏造」などと思った人はいないのではないでしょうか。ましてや植村さんの記事では「強制連行」とは書いていないのに、批判する当の産経新聞では「強制連行」と書いているのですから。植村さんに対する誹謗中傷は、全く的外れです。

結局は、第一報を朝日新聞に書いたのが植村さんだったということと、植村さんの義母のことがあって「叩きやすかった」というだけにすぎません。そして奴らにとってみれば「慰安婦」問題の事実が何かということよりも、「慰安婦」問題を「叩く」ことこそが必要だったということなのでしょう。

今でも「強制連行はなかった」「性奴隷ではない」と、右派論壇ばかりか安倍首相自身が公言してはばかりません。もちろんそれは事実ではないのですが、「捏造記者」というレッテルと同様、事実が事実として通用しないのが今の日本です。

しかし、そういういわれなきバッシングを受けた被害者……というイメージだけで植村さんの人となりを捉えてはいけないのだということが、この本を読んでよくわかりました。

学生時代から韓国の民主化運動に関心を寄せ、ソウルでの語学留学時代にも手書きのミニ新聞で韓国情勢と日本の戦争責任を発信したそうです。大阪社会部時代には夕刊に「이우 사람(隣人)」というコラムを書き、在日コリアンの置かれた状況を報じました。特に在日韓国人政治犯問題には強い関心をもって取り組んだのだそうです。

その流れでの「慰安婦」問題です。金学順さんが名乗り出る前の1990年には「慰安婦」被害者の証言を取るために訪韓するも空振り。1991年に先述の第一報を報じますが、その後「慰安婦」問題については記事を一つ書いただけでテヘランへ異動することとなり、先述の通り本人の意志もあって距離をおくことになります。

韓国の民主化運動と在日コリアンの社会に対する植村さんの姿勢には、強く共感します。また1990年の取材中に知り合った彼女と、彼女の親の反対を押し切って駆け落ち同然で一緒になった愛を貫く生き方にも、感銘を覚えます。

金学順さんが名乗り出た直後、植村さんが当時雑誌「MILE」に書いた記事にこうあります。
「太平洋戦争開戦から50年たって、やっと歴史の暗部に光が当たろうとしている。この歴史に対して、われわれ日本人は謙虚であらねばならないし、掘り起しの作業を急がねばならない。放置することは、ハルモニたちを見殺しにすることに他ならないのだ」

「慰安婦」問題からいったん距離をおいた植村さんは、先日、週刊金曜日に(自身の裁判等のことではなく)「慰安婦」問題の記事を書きました。25年たって、初めてのことだそうです。
その記事のことはこの本で知ったのではなく、この本を買う機会になった223日の大阪での集会で、植村さん自身がおっしゃっていたこと。

バッシングを受けた人間が立ち上がり、理不尽な攻撃をした者を裁判で訴えるなかで自分の正しさを再確認し、そして今また日本軍「慰安婦」被害者に向き合い、記事を書いています。とても素晴らしいことだし、わたしたちも勇気をもらったような気持ちになります。

きっと裁判には勝利するだろうし、またそうなるために私たちも努力しなければならないと改めて思いました。植村さんにかけられた攻撃は植村さん個人に対する攻撃ではなく、日本軍「慰安婦」被害者に対する攻撃であるし、日本の民主主義にかけられた攻撃です。

植村隆さんを応援しましょう!

そのためにも、この本をぜひ読んでください。


おかだ だい(日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワーク)



2017年9月17日日曜日

東京第10回の案内

東京訴訟の第10回口頭弁論と報告集会は
10月11日(金)に開かれます。
報告集会では、日本報道検証機構代表理事の楊井人文さん(弁護士)が「フェイクニュースにどう向き合うか」と題して講演します。


2017年9月10日日曜日

10.13札幌報告集会

植村裁判札幌訴訟報告集会は1013日も開催します

10月13日に予定されていた札幌訴訟第10回口頭弁論が進行協議(非公開)に切り替わり、この日の口頭弁論はなくなりました。これに伴い、傍聴もなくなりましたが、裁判報告集会は開催時間を変更して予定通り開催します。会場と講演には変更はありません。
▽10月13日(金)午後6時半から(開場午後6時)
▽高教組会館(北海道高等学校教職員センター)4階ホール(中央区大通西12丁目、電話011-271-3627)
▽弁護団報告(進行協議について)+植村さんのお話し
▽講演 高嶋伸欣・琉球大名誉教授(著書に「教科書はこう書き直された」「教育勅語と学校教育」「拉致問題で歪む日本の民主主義など多数)
▽演題「1981年から取り組み始めた慰安婦問題の学習――明治以来の『脱亜入欧』の差別的アジア認識の払拭をめざして」

2017年9月8日金曜日

第9回札幌訴訟速報

決定! 証人尋問を来年2月16日に実施

札幌訴訟第9回口頭弁論は9月8日、札幌地裁803号法廷で開かれた。
前回までに論点はほぼ整理され、双方の主張は出尽くしていたため、この日は今後の進め方について双方で意見が交わされた。その結果、岡山忠弘裁判長は、次回弁論を来年2月16日(金)に開き、証人尋問を行うことを決めた。10月に設定されていた口頭弁論は取りやめとなった。証人尋問の輪郭も明らかになった。原告側は証人として喜多義憲氏(元北海道新聞ソウル特派員)、吉方べき氏(言語心理学者、ソウル在住)と北星学園大学関係者1人の計3人を申請する、と小野寺信勝弁護団事務局長が法廷で明らかにした。一方、被告側は櫻井氏について1~2人、新潮社は1人(編集者)、ワックは2人(社長と研究者)、ダイヤモンド社はなし、との予定を示した。

次回の口頭弁論が10月に設定されていたため、証人尋問の日どりが決まるのは早くてもその日ではないかとみられていた。ところが、この日、櫻井氏側から提出された準備書面に対し、植村氏側は、すでに主張と反論は十分に尽くしたとして「同書面への反論はしない(必要ない)」と応対したため、岡山忠弘裁判長は次回弁論予定を取りやめ、証人尋問の日程の話し合いに一気に進んだ。原告側はこれまでずっと迅速な審理を求めてきた。この日の応対もその考えに沿うものだった。一方、被告側は書面提出に手間取るなど、ゆっくりペースだったから、急転直下の決定には肩透かしを食らったのではないか。
2月16日の証人尋問は朝から夕方までの終日行われる。証人の陳述をめぐる主尋問と反対尋問がぶつかり合い、大詰めの緊迫した対決と応酬の場面となる。1日では終わらずさらに期日が追加されることも予想されるが、ともかく証人尋問期日が確定したため、判決の時期も見えてきた。小野寺事務局長は口頭弁論後の報告集会で、「順調にいけば、来年5~6月に最終準備書面提出(最終弁論)、夏季休暇明け(9月ころ)に判決となるかもしれない」との見通しを示した。

この日正午の札幌の気温は24度。汗ばむほど穏やかな秋日和だった。午後3時30分開廷、同50分閉廷。弁護団席には原告側17人、被告側7人が座った。
傍聴券を手に入れるための行列には70人が並んだが、定員(71人)には満たなかった。抽選なしは札幌訴訟では昨年4月の第1回以来初めて。岡山裁判長が次回10月の弁論を取りやめたことについて、「傍聴席のみなさんは(その日も)適宜、集会を開いてください」と語りかけると、ほぼ満席の傍聴席に笑いが巻き起こる一幕もあった。

裁判の後の報告集会は午後5時から7時過ぎまで、北海道自治労会館で開かれた。上田文雄弁護士(「支える会」共同代表、前札幌市長)のあいさつの後、弁護団報告(小野寺事務局長)と植村隆さんの「夏の講演ツアー」報告、田中宏・一橋大名誉教授の講演「アジアと日本が共存するには―ー繰り返される差別の源流をさぐる」があった。詳報は後日掲載。また、灘中学校の教科書採択への攻撃に反対し、同校の姿勢に連帯するアピールを採択した。

【写真】上=入廷する植村さんと弁護団、下=報告集会(左)と田中宏さん
photo by Kazuhiro ISHII






























灘中問題でアピール

9月8日に開いた植村札幌訴訟報告集会で、つぎのアピールが採択されました。アピールは、植村裁判を支える市民の会事務局が起案し、集会で読み上げて説明した後、参加者の拍手で採択されました。
全文を掲載します。


歴史教科書採択にかかわる灘中学校への

バッシングに反対し、

灘中学校の姿勢に連帯するアピール


 私立灘中学校・高等学校(神戸市)が、中学校の歴史教科書『ともに学ぶ人間の歴史』(学び舎)をめぐって、「日本会議」系と思われる右翼グループから、不当な攻撃を受けています。学園の自治、教育の自由を脅かす、危機的な状況は他校にも広がる可能性があり、3年前、北星学園大学に対して行われたバッシングとも似た様相を示しています。
 私立である同校の教科書採択は、毎回、検定済教科書の中から担当教科の教員たちが相談して候補を絞り、最終的には校長を責任者とする採択委員会で決定しています。『ともに学ぶ人間の歴史』は2015年からの新規参入ですが、同校のルールに従い公正に決められ、16年度から使用しています。担当教員たちは、同書が歴史の基本である「読んで考えること」に主眼を置いていることや、執筆者が現場を知る教員・元教員であること等を評価したそうです。しかし、同書の採択が決まった15年末から、政治的圧力や匿名の誹謗中傷が多数寄せられはじめました。
ネット上でも公開されている和田孫博校長による論稿「謂れのない圧力の中で──ある教科書の選定について──」では、灘校を襲ったバッシングと煽動者の調査・分析が綿密になされており、それらの詳細を知ることができます。例えば、教科書採択後のある会合で、自民党の県会議員から「なぜあの教科書を採用したのか」と詰問されたことや、灘校OBの自民党衆議院議員から電話がかかり、「政府筋からの問い合わせなのだが」と断った上で同様の質問を投げかけてきたことが述べられています。
和田校長は、この自民党衆院議員に対して「検定教科書の中から選択しているのになぜ文句が出るのか分かりません。もし教科書に問題があるとすれば文科省にお話し下さい」と返答したそうですが、それもそのはず、国立や私立学校の教科書の採択の権限は校長にあり、直近の15年度検定に合格した同書を学校が採択したことに何ひとつ問題などありません。にもかかわらず、現在まで同校には、「「学び舎」の歴史教科書は「反日極左」の教科書であり、将来の日本を担っていく若者を養成するエリート校がなぜ採択したのか? こんな教科書で学んだ生徒が将来日本の指導層になるのを黙って見過ごせない。即刻採用を中止せよ」「OBだが今後寄付はしない」等といったほぼ同文のハガキが200枚以上、散発的に寄せられているとのことです。
和田校長の調査によって、誹謗中傷の煽動者は、日本会議とも関係の深い自称「近現代史研究家」水間政憲氏であることが明らかにされました。水間氏は自身のブログ上で「学び舎」の教科書を採択した学校を名指し、各校に対して、抗議の「緊急拡散」を呼びかけており、そこに掲載された抗議文例や「指南」は、実際、灘校に寄せられたハガキの文面とほぼ同一のものだといいます。
このようにネット上で広く誹謗中傷を呼びかける手法は、朝日新聞元記者の植村隆氏や北星学園大学が日本軍「慰安婦」問題をめぐって受けたバッシングと同様のものであり、私たちは、仮想空間で膨れ上がる一方的な他者への排撃や不寛容さ、反知性主義の噴出を見過ごすわけにはいきません。
さらに、同校が誹謗中傷のターゲットとされた要因のもうひとつには、和田校長も指摘するとおり、『産経新聞』(2016319日、1面)の「慰安婦記述 三十校超採択̶――「学び舎」教科書 灘中など理由非公表」という見出し記事の影響もあるようです。そこからは、思想的背景にとどまらず、フジ・サンケイグループ傘下の「育鵬社」が発行する『新しい日本の歴史』に対し、いわゆる進学校を中心に採択が進んだ「学び舎」の教科書への危機意識も読み取れます。
和田校長をはじめ、灘中学校教職員のみなさんの教科書採択に関わる誠実な対応と、理不尽なバッシングに屈せず教育者として教育の自由、学問の自由を堅持する揺るぎない姿勢と見識に深い感銘を覚えるとともに、それらの自由を侵害し、教育現場を萎縮させるいかなる圧力にも断固として反対することを表明します。

201798日 
植村裁判札幌訴訟 第9回口頭弁論報告集会 参加者一同